こうして、すっかり、村になじんだてんてん坊でしたが、不思議に思っていることがありました。
毎日、境内に集まって、元気いっぱいに遊んでいる子供たちが、昼が過ぎ、少しでも日がかたむき始めると、そそくさと、家に帰って行くのです。
「なあ、おまえたち。どうして、いつも、こんなに早く、帰ってしまうんだね。お天道様は、まだ、あんなに高いっていうのに」
とうとう、あるとき、てんてん坊は、子供たちを引き止めて、聞きました。
すると、最初はもじもじしていた子供たちが、ぽつり、ぽつりと、わけを話し始めました。
それは、聞くもおそろしい話でした。
おまつという母親が子どもをなくし、山に入ってオニになったこと。
お城から強いおさむらいたちがやっつけに来たけれど、ぎゃくに、みんな、やっつけられてしまったこと。
遠くから、とてもえらいお坊さんが退治に来たけれど、やっぱり、かなわなかったこと・・・。
子供たちの顔は、だんだんと、青ざめていきました。