オニの忘れた子守歌(4/6)

文・伊藤由美   絵・岩本朋子

てんてん坊は、「ふうむ」と、うなり、
「なるほど、これだったか」
と、うなづきました。
「なるほどって、なんのことしゃ?」
年長の太一が聞くと、てんてん坊は言いました。

「実は、旅のとちゅう、夢で、あの山の上に仏さまが現れてな。わたしにおっしゃったんだよ、『話を聞きにおいでなさい』と。何のことやら、分からずに、この村までやって来たんだが、今、やっと、合点がいったよ。仏さまは、山のオニに話を聞きに行けとおおせだったのだなあ」
「オニの話ば聞きに行くだあ!?」
子供たちは大さわぎになりました。

太一は言います。
「だめだ、だめだ、てんてん坊! 食われっちまうぞ! あんだだりっぱなお坊さまが、かなわねかったんだぞ。てんてん坊みでなボロ坊主が、かなうわけ、ねえでねえか!」
「んだ、んだ!」と、ほかの子供たちもさけび、お千代などは泣き出しました。
てんてん坊は、あわてて、子供たちをなだめました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

岩本朋子 について

福井県福井市出身。同市在住。大阪芸術大学芸術学部美術家卒。創作工房伽藍を主催。伽藍堂のように何も無いところから有を生むことをコンセプトでとして、キモノの柄作りからカラープランニング等、日本の伝統的意匠とコンテンポラリーな日用品(漆器、眼鏡、和紙製品等)とのコラボレーションを扱い、オリジナルでクオリティーの高いものづくりを心掛けている。また、高校非常勤講師として教えるかたわら、福井県立美術館「実技基礎講座」講師を勤める。