「あれかな?」
てんてん坊はたき火に近づいていきました。
「こんばんは。ちょっと、あたらせてもらってもいいだろうか?」
「ああ、ええよ」
ガラガラ声が答えました。
ギラギラと光る目に、耳まで、カッと、さけた口。
ぼさぼさのかみにはかれ葉がからまり、着ているものは、もとの形がわからないほど、ぼろぼろです。
「ありがたい。春とは言え、夜は、やっぱり、冷えるなあ」
てんてん坊は、たき火の前に、どっかり、座ると、うれしそうに、火に手をかざしました。
「お坊さん、こんな夜半に、なじょな用で、ここさ来たのしゃ?」
ガラガラ声が聞きました。
「わたしか。わたしは、オニに会いに来たんだが、ひょっとして、あんたがそうかね?」
「そっしゃ」
オニは、ガハガハと、笑いました。