オニの忘れた子守歌(6/6)

文・伊藤由美   絵・岩本朋子

ねんねん ねんころ ねない子は
甘い水あめ あたりゃせぬ
ねた子にゃ あげましょ 銀の笛
ゆうらり お舟も ゆれてます~

歌い終わって、おまつは目を開けました。
そこは一面の菜の花畑でした。

見ると、花の中を、女の子がかけてきます。
「おっかちゃん!」
「小糸!」
ふたりは、しっかりと、だき合いました。

おまつの目からはなみだがあふれ出ました。
「おっかちゃん、どこに行ってたの。あたい、ずいぶん、さがしたんだよ」
「さあ・・・。おっかちゃんにもわからないんだよ。なんだか、長い、悪い夢を見ていたみたいだよ」
「ふうん。でも、もう、だいじょうぶ。いっしょに、おうちに帰ろう。ばあちゃんも、おとっちゃんも、まっているよ」

小糸が指さす方を見ると、真新しいかやぶき屋根の下で、ばあさまと、夫の米吉が、にこにこと、手まねいていました。
「ああ、いっしょに、おうちへかえろうね」
ふたりは、ぶらぶらと、手をつないで、家に向かって行きました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

岩本朋子 について

福井県福井市出身。同市在住。大阪芸術大学芸術学部美術家卒。創作工房伽藍を主催。伽藍堂のように何も無いところから有を生むことをコンセプトでとして、キモノの柄作りからカラープランニング等、日本の伝統的意匠とコンテンポラリーな日用品(漆器、眼鏡、和紙製品等)とのコラボレーションを扱い、オリジナルでクオリティーの高いものづくりを心掛けている。また、高校非常勤講師として教えるかたわら、福井県立美術館「実技基礎講座」講師を勤める。