ゴホンゾンサマ(1/3)

文と絵・中西恵子

もうすぐ、夜が明けます。
「わわわわん」
じろうが目をさましました。

「ポチったら、うるさいなあ」
にわにでてみると、小さな犬がポチの水をのんでいます。
とてもつかれているようです。
茶色いみじかい毛にどろがいっぱいくっついています。

「どこからきたんだろう。おいで」
すると、しっぽをブンブンふって、とびついてきました。
じろうがだっこしました。

「わあ、ちっちゃくてかわいいなあ。ポチの赤ちゃんのときみたい。リュックサックしょってるんだね。あれ、てがみももってるの?」

くびわに、小さくたたんだ紙がむすんであります。
じろうは、まだ漢字がよめません。
となりのへやで、じいちゃんがねています。
じろうは、いそいでおこしにいきました。

中西恵子 について

愛知県新城市生まれ。 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。 第6回小学館童画新人大賞入賞。 絵本に『かえる』『ヘキサ、もりへいく』『トチノキのひっこし』『じろう、ひとりででんしゃにのる』など(以上福音館書店月間絵本「こどものとも」シリーズ、現在品切れ)、 さし絵に『たからものくらべ』(杉山亮作、福音館書店)、『点字の世界へようこそ』(黒崎惠津子文、汐文社)がある。 「らしさ」を追いかけて、七転八倒中。