ゴホンゾンサマ(2/3)

文と絵・中西恵子

「うわあっ」
じろうは、びっくりして、ひっくりかえりそうになりました。
なんと、たくさんの火の玉がごおごお赤くもえて、ぐるぐるまわっているのです。

ほのおのまんなかに、ものすごくこわいかおをした人が立っていました。
とても大きくて、天井までとどきそうです。
かみの毛がさかだち、右手にかたな、左手にまるい玉をもっています。
うつくしいししゅうでかざられたきものが、フワフワおどって、じろうの顔にさわりそうです。

「ご、ごめんなさい。かってにはいったりして。おまいりにきた犬がはいったので、さがそうとおもっただけなんです。ほんとうです。すぐにかえります」
そういったものの、じろうはこわくてうごけません。

中西恵子 について

愛知県新城市生まれ。 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。 第6回小学館童画新人大賞入賞。 絵本に『かえる』『ヘキサ、もりへいく』『トチノキのひっこし』『じろう、ひとりででんしゃにのる』など(以上福音館書店月間絵本「こどものとも」シリーズ、現在品切れ)、 さし絵に『たからものくらべ』(杉山亮作、福音館書店)、『点字の世界へようこそ』(黒崎惠津子文、汐文社)がある。 「らしさ」を追いかけて、七転八倒中。