サワガニの理容室(1/6)

文・ねこはるさめ  

「そうなの。わたしがどんなにカワイクオシャレをしていても、みんなそろって、『今日もステキな耳ですね!』なのよ。ちっとも耳以外を見てくれないの」
「あらまぁ、それはかなしいですね・・・」
「だから、この耳にまけないくらいカワイクしてちょーだい!」
「かしこまりました」
とは言うものの、サワガニはハサミをうごかしながらも考えこみました。

〈長い耳は、ウサギさんの一ばんのとくちょう。この耳をけしてしまっては、ウサギさんらしさもなくなってしまうし・・・。さて、どうしたものか〉
考えながら、ふとカガミを見ました。
するとカガミに、後ろの花びんと、そこにいけられている花がうつっていました。

ねこはるさめ について

和歌山県出身。ボランティアでオリジナル童話の読み聞かせ活動をしています。それ以外にも、少し大人びた児童文学テイストな作品を創作。人がいだき育む幻想を紡いだ短編を好んで書きます。 ホームページ:滑空舎 http://kakkusha.sakura.ne.jp/media/