ステルスおばあちゃん(1/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「困ったなあ」
コスモ氏は、「ううむ」と、考え、パっと、ひらめきました。
「そうだ! センサーがお母さんを感知しないようなデバイスを作ればいいんだ!」

コスモ氏は本名を五所河原 濾藻(ごしょがわら こすも)といい、世界でも有名な「五所河原コスモ研究所」の所長です。
濾藻という変な名前は、父親の五所河原 那由他(ごしょがわら なゆた)氏が「よごれた川にはびこる藻(も)のような世の中のきたない物を濾(こ)してきれいにする人間」になるようにと、ものすごい高望みをして、つけた名前でした。

おかげで、コスモ氏は学校時代にとても苦労することになりました。
なぜかって?
テストのたびに、この長い名前を、まず、最初に、答案用紙に書かなくてはならなかったからです!
それは、田中一とか、山川文子とかという、字数の少ない名前に比べて、とても時間がかかるということでした。
それで、小学校、中学校を通して、コスモ少年は100点を取ったことがありませんでした。
このとんでもない名前のせいで、テスト時間が足りなくなり、最後の方の問題が解けずじまいになったからです。

「父さん、どうして、こんなややこしい名前にしたの!?」
うらんだって仕方ありません。
そこで、高校に入ったころから、コスモ氏は、名前を速く書く練習をしました。それも、てってい的に。
五所河原濾藻、五所河原濾藻、五所河原濾藻・・・。
国語も、数学も、理科も、社会も、そっちのけ。毎日、毎日、名前を速く書く練習だけしました。そして、ついには、この長い名前を、シャシャッと、たった2秒で書けるようになったのです!

それからというもの、コスモ少年は100点を、いっぱい、取れるようになりました。成績はいつもトップ! そして、大人になると、博士になって、五所河原コスモ研究所を開くまでになったのです。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに