「よし。そうと決まれば」
優しゅうなコスモ博士は、さっそく、研究にとりかかり、あっという間に、明かりセンサーに感知されない装置を作り上げてしまいました。
「名付けて、アンチ・明かりセンサー・デバイス!」
天才コスモ博士の天才的な発明は、うで時計ほどの、ちっぽけな装置。
「母さんがこれをつければ、どんなセンサーにも見つからないぞ!」
体の中の病気を探したり、母親のおなかにいる赤ちゃんの様子を見る時に活やくするエコー、つまり、音波を使っても。
銀行や美術館などにぬすみに入るどろぼうをひっかけて、警報を鳴らすレーザーを使っても。
いえいえ、すごいのは、その装置をオンにすると、光でさえ、ハツさんをとらえることができなくなる! つまり、透明人間みたいに、だれの目にも見えなくなるってことなのです!
「こりゃ、まったく、ステルスっすね!」
コスモ博士の助手をしている多田君も、感心すること、しきりです。
ステルスというのは、戦とう機やドローンが、忍者のように、敵のレーダーから、消えてしまう装置のこと。
「ああ、多田君。これで、わが家の明かりセンサーさわぎがおさまるといいんだがなあ」
キラキラした銀色のデバイス。それには赤い針がついていて、ダイヤルでオンとオフに切りかえられるようになっています。
「母さん、これを身につけてください。オンにしておけば、夜になって、玄関に出ても、センサーの明かりはつきませんから」
研究所から装置を持ち帰って、ハツさんにわたすと、新しい物好きのハツさんは大よろこび。
さっそく、うでにはめて、オンにしたり、オフにしたり。そのたび、ハツさんのすがたが、パッパ、パッパと、現れたり、消えたりします。
試しに、暗くなってから、玄関に出てみても、オンにしていれば、確かに明かりはつきません。センサーにはハツさんが見えないのです。
「どうなの、あなた! 私を見つけてごらんなさい!」
ハツさんが、えらそうに、明かりセンサーと対決しているのを見て、
「これでよし」
と、コスモ博士は大いに満足しました。