ステルスおばあちゃん(3/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「あ、ちょ、待って、博士!」
止める間もありません。博士は、カチャッと、引き金を引きました。すると、
バキューン!!
《タダシ! レタス、忘れないでって、言ったっしょ!》
と、かん高い、女の人の声。
「あわわ! ごめん、サっちゃん!」

多田君が頭をかかえたので、コスモ博士は大笑い。
「なんだ、多田君がこわいのは奥さんか!」
「な、何すか、そのピストルは!?」
多田君は目をむきました。
「これぞ、私の大発明、テンテキガンだよ」
「テンテキガン?」
「そう。これを向けて引き金を引けば、相手の苦手な音がするんだ。たとえば、カラスになら、ネコの声。ヘビになら、オオタカや、マングースの声ってぐあいにね」
「ははあ。それで、おれの場合はサチコすか。そんなら、先生は?」

多田君はコスモ博士の手からテンテキガンをうばって、博士に向かって打ちました。
カチャッ! バキューン!!
《こーら、コスモ! 多田さんをいじめちゃだめ!》
と、ハツさんの声。
「ご、ごめんなさい、お母さん!」
今度は、多田君が、お腹をかかえる番です。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに