コスモ博士は、びっくりしました。
「じゃあ、あなたは、ただ、食べたかったから、マシュマロをぬすんだってことですか?」
「はい、ただ、食べたかったから。でも、ぬすむって、どういうことでしょう? キエール星では、だれでもが、どこにあるものでも、食べたり、使ったりしていいんですが、地球では、ルールがちがうんですか?」
「ええ、大ちがいです! 人のものを取ったら、どろぼうになるんですよ。それは、とても悪いことなんです」
「ほほう・・・」
ミエンダー氏は、しばらく、考えて、
「これからは、気を付けるようにします」
と、ゆらりっと、頭を下げました。
「もう、いいかげんにしてちょうだい、コスモ!」
いらいらして聞いていたハツさんが、二人の話をさえぎりました。
「あなたは、もう、ねてちょうだい! 私は、ミエンダーさんと、映画の続きを見るんだから!」
「はいはい、分かりましたよ、お母さん。おじゃましましたね」
コスモ博士は苦笑いして、立ち上がりました。
「では、ミエンダーさん、ごゆっくり。私の家にあるものは、何でも食べたり、使ったりしてくださいね。それと、マシュマロのことは、私が警察やお店に、ちゃんと話をしておきますから、安心してください」
コスモ博士がリビングから出て行ったので、ハツさんは、安心して、ミエンダー氏と、映画の続きを見始めたのでした。
その日から、ミエンダー氏は、五所河原家のリビングで暮らすようになりました。
昼間は、ずっと、ハツさんと、映画を見て過ごし、夜、休む時には、「キエール人は立って眠るので、ベッドは必要ないんです」と、立ったまま、目をつぶります。
明かりを消すと、ミエンダー氏は、サワサワと、木の葉のような音を立てて、いっそう細く、まとまります。そして、朝になると、庭にいて、ゆうらり、体を空に開いているのでした。
「きらきらして、まるで、美しい樹木のようねえ」
「ええ。キエール人は光合成ができるんですよ、きっと」
博士は興味しんしんです。