ステルスおばあちゃん(5/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

ミエンダー氏が来てからというもの、ハツさんは、パトロールも忘れて、
「これを見て、地球のことを、もっと、勉強しなさいね」
と、ミエンダー氏に、好きな映画を見せまくりました。
でも、大のSFファンのハツさん。ミエンダー氏に見せる映画は、「星間戦争」「わく星からのしんりゃく者」「アンドロイドの逆しゅう」などなど、宇宙ものばかり。

「ほほう、すごいですねえ! だれですか、あの人は? ドカーン!! バキューン!! 砲撃(ほうげき)の下を、走る、走る! けが人や子供たちを助けるために! ゆうかんだなあ!」
ミエンダー氏が、いちいち、感動するので、ハツさんはうれしくてたまりません。
「あれはクルーガー大佐よ! じゃ悪なゴブリン星人から、地球の平和を守るのよ!」
ミエンダー氏は、アーモンド形の目を、グルグル、回して、次つぎとくり広げられるアクションに見入ります。

「今度の若者は、黒マントの怪人と、光る剣で戦っていますね! がんばれ!」
「マスター・キンコンカンよ。ヒックス騎士団の一人なの。相手は宇宙征服をたくらむダークマター卿(きょう)。実は父なのよ!」
でも、ハツさんは、午後8時を過ぎると、どうにも眠くなって、こっくり、こっくりし始めます。

「ああ、まぶたがくっつきそう。ごめんなさい、ミエンダーさん。この続きは、また、明日ね」
そうして、ハツさんがねてしまうと、今度は、コスモ博士が、そっと、やって来て、ミエンダー氏と、夜がふけるまで、話しこむのでした。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに