「ワープドアを使えば、銀河系のどんな所へも、簡単に行くことができるんです。そうやって、さまざまな星を訪ね、いろんなことを勉強するのが、キエール人は大好きだし、とても大切な仕事だと考えているんです」
ハツさんは首をかしげました。
「銀河系のたくさんの星の中から、あなたは、どうして、地球を選んだの?」
ミエンダー氏は、にっこり。明るい木もれ日のようです。
「キエール星の子供たちは、望遠鏡をのぞいて大きくなります。大人になったら、ワープドアをくぐって、旅をするのが、何よりの夢なので。ぼくも、毎晩、夜空をながめて、大きくなりました。
青くきらめく若い星。年老いて死にゆく赤い巨星。にじ色の美しい雲に包まれて、もうかがやくのをやめてしまった暗い星。
とりわけ、ぼくは、銀河のすみっこの、つつましいオレンジ色の星にひかれました。その暖かい色を見ていると、なぜか、ほっと、心がなごんで。それが、あなた方の太陽でした。
成人して、星間旅行が許された時、ぼくは、迷わず、ここを選びました。ほんとにうれしかったですよ、初めて、あこがれの地球に来た時は!」
「じゃあ、もう、何度も地球に来ているの、今までに!?」
「はい。そのたびに、いろいろな発見がありました。でも、今度の旅は特別ですよ! あなた方、地球人とお友達になれて!」
ハツさんの心は、遠くて近い、キエール星に飛んで行きました。
「キエール星から私たちの太陽を見たら、どんな風に見えるの? それは、どんな夜空なの?」
「そりゃあ、すばらしいですよ、ここより、ずっとたくさんの星が見えて! その間を、4つの月と17のわく星が、順ぐりにわたって行くんです。あなた方の太陽は、青い、美しいふたご星によりそうように、小さく、光って見えますよ」
目を閉じて、じっと、耳をかたむけていたハツさんは、目を開いて、聞きました。
「ミエンダーさん、私もキエール星に行けないかしら?」
ミエンダー氏が、ちょっと、顔をしかめたように見えました。
「ああ、それは難しいですね。あなた方は、ワープドアを通りぬけるには、だいぶ、重過ぎるんですよ」
「重過ぎるの? 私は、たった、34キログラムしかないのに・・・」
ハツさんは、しょんぼり、うなだれました。