ミエンダー氏がデバイスを切って、周りがもとの公園にもどったとき、ハツさんの心のとげは、すっかり、とけていました。
「いま見えている物がすべてじゃないんだわ」
雑草も、ぼろいパンダも、むき出しの鉄骨さえ、何だか、いとしく思えるハツさんでした。
パラパラと、ヘリコプターがやって来る音がしました。
「あら、コスモがヘリをそうじゅうして、私たちを探しに来たわ。手をふってやりましょう」
「博士はヘリコプターがそうじゅうできるんですか。車は運転できないのに」
「ええ。空は対向車が来ないから、平気なんですって。コスモー、ここよ!」
ハツさんは手をふりました。
気づいたヘリが空き地に下りる前に、ハツさんは、ミエンダー氏に、どうしても、聞いてみたいことがありました。でも、それは、とても聞きにくいことだったので、ハツさんは、ゴクリと、つばを飲みこみました。
「ミエンダーさん。あなたは時間旅行が出来るって言ったわよね。じゃあ、未来にも、行ったわけ?」
「ええ、もちろん」
「教えてください。私たち、人類は、これからずっと先の先・・・たとえば、今から6600万年後、どうなっているの? 恐竜みたいに、絶めつしているの? それとも・・・」
ミエンダー氏は、とびきりの木もれ日顔で、ハツさんに言いました。
「だいじょうぶですとも。人間は、そのころ、かしこく、おだやかで、平和な、美しい種族に成長していますよ。今日の講演会で、私が、地球のみなさんに、いちばん、伝えたかったことは、それだったんです」