そんなわけで、ふたりは、多田君の車で、コスモ博士の家に向かいました。
着いてみると、玄関のとびらは開けっ放し。台所もリビングも、食器やチラシ、雑誌などでめちゃくちゃ。庭への引き戸さえ、ドバっと、開いていて、カーテンが、バサバサ、おどっています。
「なんか、おかしいっすよ、先生!」
「ううむ! 母さん、どこですか!?」
二人は2階にかけあがり、ハツさんの部屋のドアを開け、その場に立ちすくんでしまいました。
部屋の中は、床から天井まで、色とりどりの風船でいっぱいだったのです。
「先生、こ、これは!」
「母さん、いるんですか!?」
コスモ博士がよんだとき、風船が、サワーっと、流れ始め、開いていた窓から、どんどん、出て行くではありませんか! そして、風船が、全部、なくなった後に、ハツさんが、ぽつんと、立っていました。
「いったい、どうしたっていうんですか、母さん!?」
ハツさんは、答える代わりに、くちゃくちゃ、ポワーンと、風船ガムをふくらませます。
「やばいっすよ、先生! ハツさんのうで! スタングラをはめてる!」
多田君がさけんだちょうどその時、ハツさんがスタングラのスイッチを入れました。
「い、いけない、母さん!」
コスモ博士と多田君はかけよりましたが、その目の前で、ハツさんは、ぱっと、消えました。風船の最後の1つが、ぽわんと、窓から、出て行きます。
「大変だ! 多田君、早く、窓を! 」
ふたりは、急いで、窓をしめ、見えないハツさんをつかまえようと、部屋中の空気を、両手で、だいてみました。でも、ハツさんをつかまえることはできません。
「とにかく、警察へ! そうさく願いを出さなくちゃ!」
「母さんは見えないんだよ。警察じゃ、どうにもならないよ。それより、心当たりを、片っぱしから当たろう! 私は公園へ!」
「じゃ、おれは海の見える丘へ!」
その日一日、コスモ博士と多田君は、どれだけ、町を走り回ったことか!でも、どうしても、ハツさんを見つけることができませんでした。