むしゃむしゃむしゃむしゃ。
イノシシのうんてん手さんは、口いっぱいにほしイモをほおばりはじめました。
ポリポリポリポリ。
後ろの方から小きみの良い音が聞こえます。
「何の音かしら?」
チャン小熊ねずみが後ろをふり返ると、ヤマネのおじさんが青々とした大こんのはっぱをはしからかじっていました。
「十時だ、十時だ。今日のお十時はしんせんな大こんのはっぱなのだ」
キュルキュル、キュルキュル。
ビンのフタを開ける音がします。バスの真ん中あたりを見ると、アナグマのお母さんがハチミツの入ったビンを開けていました。
ふたを開けるとアナグマのお母さんはビンの中に大きなおさじをさしこみました。
おくるみのの中からは小さなアナグマの子どもたちがかおを出して小さなお口を思い切り開けています。
「お十時はおいしいはちみつですよ。はい、あーん」
アナグマのお母さんは大きなおさじにビンの中のはちみつを山もりよそい、子どもたちに1さじずつ食べさせました。
アナグマの子供たちはキイキイ言ってうれしそうにみをよじりました。
子供たちのようすを見て、アナグマのお母さんは目じりが口のはしにくっつきそうな位にほほえみました。
チャン小熊ねずみは後ろをふり返ったまま、しばらくヤマネのおじさんとアナグマのおや子を見ていましたが、だれもチャン小熊ねずみの方など見むきもしませんでした。
チャン小熊ねずみはよこを見ました。
よこではイノシシのうんてんしゅさんがさきほどとかわらずにほしイモをムシャムシャ食べています。
お十時に食べるものがないのはチャン小熊ねずみだけでした。
チャン小熊ねずみはまえをむいてうつむきました。(続く)