「すごい雨だ。ことしもはしをわたれないかもしれない」
口の中に入ったほしイモをのみこみながら、イノシシのうんてんしゅさんが言いました。
バスは川にかかる大きなはしに向かっていました。今日までふりつづいた雨で、川はもはやあふれんばかりの水で、海のようになみうっていました。
そして次のしゅんかん。ノンノンノンノンいっていたバスのエンジン音がピタリと止まりました。
「あ、止まっちゃった」
と、イノシシのうんてんしゅさんが言いました。
「やれやれ。こりゃ当分うごかんぞ」
ヤマネのおじさんがかたを回しました。
「今年もこのじきか」
アナグマのお母さんが立ち上がりました。
「そう思って、一おうじゅんびをして来たわ。さあ、さっさと行きましょう」
(なにがおきたのかしら?)
チャン小熊ねずみの心からさみしさがきえました。そしてよそうしなかったことがおきているので、またもや不安が広がってきました。
しかし、不安でもボールつきをしてはいけません。
ボールつきをしたら、おばあちゃんに会いに行けなくなります。
チャン小熊ねずみはボールをぎゅっとだきしめました。
「ええー。じょう客のみなさん、じょう客のみなさん」
イノシシのうんてんしゅさんがのん気な声で言いました。
「今年のつゆの雨による増水のため、バスのうん行はここまでとなります。スズランびょういんには、まいとしのようにおよいで川を下っていきましょう」
(およぐですって?)
チャン小熊ねずみは目を大きく見開きました。
どうしましょう……。およいだことなどありません。(次のページに続く)