「蔵王まで行くだって!? グエー、グエッヘッヘ!」
マママガモは笑い出しました。
「蔵王まで行くんだって、グエッヘヘ!」
「蔵王までだって、グエ!」
「蔵王ってどこ?」
伝言ゲームも続きます。
「おまえのそのようすじゃ、とても無理だよ。もう、へろへろじゃないか。たどり着く前に、どっかの森に落っこちて、ノネズミのえさになるのがせいぜいさ」
オイボレは、キュッと、口を結んで、飛び続けました。
『ノネズミのえさなんかになるもんか!』
と、大いに腹を立てていましたが、それでも、どんどん、高度が下がって行くのを、どうすることも出来ません。
その時、マママガモがさけびました。
「全員、シフト! フォーメーション・コード、オメガ・ワン・スリー! グエー、グエー!」
それと同時に、マガモたちがおたがいの場所を入れ変え始めました。
うるさいママはオイボレのそばから消え、代わりに、少し、小さめのマガモが、オイボレのすぐ前を飛び始めました。
「いいかげんにしてくれ。どうか、じゃましないでくれ」
オイボレは泣きそうな声でたのみました。
ところが、小さめのマガモはオイボレをふり返り、
「おじいさん、うまく、ビート、合わせてね」
と、パチンと目をつぶったのです。