「きれいだろう? だけど、あれは魚いっぴき住めない毒の水。死の湖なんだ」
いつの間にか、また、マママガモがそばに来て、言いました。
「ここが蔵王のてっぺんだよ。あんたとは、ここで、お別れだ。私たちは、もっと先まで、行かなくちゃならないからね。じゃあ、さようなら。うまくやりなよ。グェー、グェー!」
マママガモが、少し東に方向を変え、飛び去って行きます。
グェー!グェー!っと、ほかの仲間も続きます。
「さようなら、ハトのおじいさん!」
「太陽王に会えますように!」
などと、口々にあいさつもして行きます。
最初にオイボレとぶつかりそうになった子どものマガモも、声をかけてきました。
「ママがおじいさんのこと、『ドバトにしちゃ、ガッツがある』って。おじいさん、ママに気に入られたんだよ。『鳥たるもの、最後までほこり高く』ってのが、ママの口ぐせだからね。じゃ、さようなら」
「ぶつかりそうになって、すまなかったね」
オイボレは、やっと、これだけ、言葉を返しました。
マガモの助けで、どうにか、ここまで来られたものの、もう、いくらも力が残っていなかったからです。