10回り。
にぎやかなビル街や、アーケードの商店街を飛びこすと、緑豊かな公園が現れます。
その先は静かな住宅街。家々の屋根が、明るい日差しの下で、さまざまな色、さまざまな形に光っています。
いくつもの橋にかざられ、町を流れる広い川。その河川じきでも、風が吹くたび、木々の葉がきらきらしています。そして・・・。
「海だ!」
とうとう、水平線が見えました。オイボレは、今や、町で一番高いビルのてっぺんにせまっていました。
「ということは、蔵王は・・・」
オイボレは、チェシャに習った方法で、南西方向を探します。
「あった! あれだ!」
すぐに、それとわかりました。近くの山々より、それは、ひときわ高いだけでなく、うっすら、雪をいただいていたからです。
「よし、行くぞ!」
と、その時、オイボレは、ビルのガラス窓に映った自分を見て、ぎょっとしました。いつの間にか、自分の真上に、焦げ茶色の大きなつばさが、音もなく、せまっていたのです。