「トンビだ!」
オイボレは、すぐに、両のつばさをすぼめました。
そして、まっすぐ、地上めがけて、急降下し始めました。
トンビもすぐに追いかけてきました。
「どうやってふり切ろう?」
その時、ハトのよく見える目が、町の路地裏の、横だおしになったゴミバケツの回りに、カラスが群がっているのを見つけました。
オイボレは、まっすぐ、カラスの群れにつっこんで行きました。
あわや、地面にぶつかるという時に、めいっぱい羽ばたいて止まり、尾羽で地面をたたくようにして、体の向きを変えました。
次のしゅん間には、ハトは、もう、急上昇していました。
でも、ハトのようにすばやく方向を変えることのできないトンビは、まっとうに、カラスの群れのど真ん中に、取り残されてしまいました。
「なんだ、こいつは! おれたちの食い物を横取りしようってのか!?」
カラスたちは大さわぎになり、とんまなトンビを、よってたかって、追い立て始めました。
おかげで、オイボレは、トンビのつめからのがれることができました。
今度は、別の、めいわくな道連れを作ってしまいました。
カラスはかしこい鳥です。群れの中でもめざとい2羽が、オイボレのやったことを、ぜんぶ、見ていたのです。
「ハトのくせに、おれたちを利用するとはなまいきな! 思い知らせてやる!」
2羽のカラスはオイボレの方を追いかけ始めました。カラスは、トンビより、ずっと、小回りがききます。
オイボレが、カラスたちをかわそうと、どんなに急に方向を変えてみても、2羽は、ぴったりと、後についてきました。
思い切って高いところまで急上昇してみましたが、それもむだでした。