ビバ・ネバル!(3/6)

文と絵・高橋貴子

なんだ?
くらやみの中で目をこらすと、ぼんやりとすがたがうかびあがってきた。
とてもきれいな色の生きもの、チョウだ。
「やあ、いらっしゃい」
ぼくはなかまがふえてうれしかった。
でもすぐにへんだなとおもった。チョウの顔がこわばっていたから。

「きみ、だいじょうぶ?」
「ねえ、あなた。おねがいよ。わたしをここから出してくださる?」
チョウがふるえる声でささやいた。
「え、きみもねばる糸きらい?」
ぼくはかなしくなって、きいた。

「この世で一ばんきらいよ。ああ、おなかがすいてたまたまとんだら、これだもの。やっぱり朝までまてばよかったわ。きゃっ!」
チョウの青い羽のうしろから、モックがゆっくりと歩いてくるのが見えた。

「きみもおきたの。きれいなチョウでしょう。おなかがすいているんだって。なにか食べさせてあげられないかしら?」
「バカいうない。そいつはおれのごはんになるのさ」
「え、なんだって?」
おどろくぼくにモックはあきれるようにいった。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。