ビバ・ネバル!(6/6)

文と絵・高橋貴子

「ビバ・ネバル! ビバ・ネバル!」
あちこちの木の上から大がっしょうがおこりはじめたのを、ぼくだけがとおくにいるかのようにぼんやりと聞いていた。
モックをさがしたけれど、そのすがたはどこにもなかった。
ミノムシとイモムシがかけよってきた。

「昼間はひどいこといってごめんね。あなたのねばりぐあいってば、さいこうだったわ」
「きみがいなかったら、ぼくたち今ごろだめだったよ。ほら、あの子ももうだいじょうだ」

チョウがきれいな羽をゆっくりとうごかし始めていた。
ぼくを見るとはずかしそうにもじもじとしてから、声にならない声で「ありがとう」といってくれた。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。