「うわ! お父さん、なにこれ気持ち悪い!」
「スズメのヒナだ」
「スズメ?」
父親の意外な言葉にまゆを寄せ、秋斗(あきと)はもう一度おそるおそる箱をのぞいた。
すこしグロテスクではあるが、よく見れば確かに鳥の形をしている。
ちいさなはげ頭についた大きな目はとじられていて、羽根の生えそろわないツバサは、まさにちいさな手羽先だ。秋斗がそっと父の手をゆすると、お母さんとにらみ合いながらその箱を秋斗にわたしてくれた。
「・・・どうして持ってきちゃったのよ!」
「どうしてって、かわいそうじゃないか。巣だってこわされてるんだぞ」
「人間の営みの中に巣をつくるってことまで、スズメにとっては自然の内でしょう。いろんなアクシデントで命を落とすことはあるものよ」
「けどな、生きてるんだぞ。言われた通り、箱に入れて近くの木にかけといたけど、親だって来なかった」
「かわいそうだとは思う。私だって助けたい気持ちもある。でも、人の手を加えるべきじゃない」