「あんまりギュッとおしこんだら鳥がびっくりするかもしれないから、そっと」
ぶつぶつとつぶやきながら、かたい透明(とうめい)なプラスチックの管の先で、すり鉢(ばち)のやわらかいエサをグッグッとついてつめていく。エサのつまった管に棒をおしこむと、エサがかたまりになっておし出されるしくみだ。
小鳥のくちばしの中にそれをつっこんで、エサを与えなくてはならない。
秋斗(あきと)は緊張(きんちょう)しながら、ケーキの箱を開く。ねむそうに目をとじていたヒナは、くちばしをツンと棒でつつくと、待ちかまえていたようにワッと大きく口を開いた。
すかさず給餌器(きゅうじき)をくちばしの中に差しこみ、エサをぐいとおし出した。サッとそれを引くと、黄色いふち取りのあるくちばしがぎゅっととじられて、あまり美味しそうに見えなかったうぐいす色のエサをノドに送ったことが見て取れた。
「食べた! 食べたよ!」
秋斗がさけぶと、いつのまにか横からのぞきこんでいたお母さんが小さくヨシ、とつぶやいた。
おどろいてふり返ると、料理本をタブレットに持ちかえていたお母さんは、バツが悪そうにこう続けた。
「ケーキの箱、中が見えにくいから、上のところ切っちゃいなさい。上にかける布はあとで持ってくる。その子のノドのところ、エサをためる「そのう」があるから、よく見てそこがふくらむまでご飯あげるの。よかったね、食べてくれて」
こまったようにお母さんは笑った。
(本作品は「第30回日本動物児童文学賞」優秀賞受賞作を一部平易に改稿したものです)