そして次の日、申しわけなさそうに帰ってきた父の手には、朝持って行ったのと同じ箱がかかえられていた。
「ダメだ・・・新しい建物作り始めたから、まわりがさわがしくてな。スズメなんて寄りつきもしなかった」
お母さんの大きなため息に、お父さんを出むかえるために二階からかけ下りてきた秋斗(あきと)が内心大喜びしたのはナイショだ。
これであのヒナは、うちの子になる!
「・・・こまったね。本当に保護するなら届出(とどけで)もしないと」
げんかん先でほほに手を当てたまま、こまり果てた様子でお母さんは首をかしげた。
「届出?」
「そう。野鳥を捕獲(ほかく)したり飼ったりは禁止されてるから。スズメだって野鳥よ、もちろん」
「え? そうなのか」
お父さんは、初めて聞いたとばかりに目を見開いた。
「物知らず」
「いや、ふつうあんまり知らないと思うけど。そうか・・・ううん」
ピイの飛んだ空(4/8)
文・七ツ樹七香