「信頼(しんらい)されてるな」とお父さんが感心してつぶやいたのに、少しこそばゆい気持ちで秋斗は胸を張った。ピイが秋斗のことをちょっとだけ特別に思ってくれているのがうれしかった。ピイは、お父さんがお母さんの目をぬすんで指を差し出しても警戒(けいかい)してさえずらない。急いでケージのはしににげてじっとしている。
そして、お母さんが訪れるといつもとちがうとがった声をあげて威嚇(いかく)した。
「お母さん! なんでそんなことするの! ピイがビックリする!」
「ビックリさせてるのよ。人間なんてこわいものなんだから」
ワッと大きく手を広げ、まるでおそいかかるみたいにして、お母さんはピイを怖がらせた。これは大事なことだとお母さんはいうが、いじめているみたいだと秋斗が本気でおこることもしばしばだった。
黄色いふちどりのくちばしは相変わらずだったが、子どもの印とはうらはらにおどろくべきスピードでピイは育っていった。