5 モルテン
仲間たちとの毎日は、夢のように楽しいのに、アディは、どうしても、トトのことを忘れることができません。
海には、たくさんのカモメもいます。
空から海面に目をこらし、魚のかげを見つけると、ドボンと、水中につっこんで、つかまえるのです。
アディは、その中に、あのトウゾクカモメがいやしないかと、探すようになっていました。
そして、ある日、とうとう、アディは見つけたのです。
「あ、きっと、あいつだ!」
とぼけた顔に見覚えがあります。片方の目ははれて、半開きになっています。
「トトがぶつかったからだわ!」
アディは、すばやく、およいで、トウゾクカモメの後ろに回り、そのせなかに、ザンブと、大ジャンプ!
「うわあ、何だ!」
アディの重みで、トウゾクカモメはしずみました。
あわてて、うき上がろうとするトーカモを、アディは、両うでで、しっかり、かかえこみました。
もがいても、もがいても、トウゾクカモメは、しずんでいきます。
「あわわ、ブクブク、ブクブクブク・・・」
トウゾクカモメは、つばさをばたつかせ、やっとの思いで、水面に顔を出しました。
「だれなんだ! やめてくれ! 死んじまうじゃないか!」
「だめよ! ゆるさないわ! あんたはトトをさらって、食べちゃったんだもの! あんたも、おぼれ死んで、アザラシや、魚のエサになるといいんだわ!」
「トトだって!? そういう君はアディかい!」
「どうして、あたしの名前を!?」
アディはびっくりしましたが、トーカモをしめつけるのはわすれません。