「どうして?」
「どうしてって・・・」
モルテンは、まん丸い目を、まじまじと、アディに向けました。
「考えてみなよ。君は名前を知っている相手の命をうばえるかい? アディ、君は、今、ぼくを殺せるかい? どう?」
アディは、考えてみて、それから、首をふりました。
「だめ。とてもむり」
「だろう。当たり前さ。名前を名のりあったら、もう、友だちなのさ」
「友だち? あんたとあたしが?」
「そうだよ」
「じゃあ、あんたは、もう、あたしを食べないってこと?」
「ああ、食べないよ。そのかわり、アディ、君も、もう、ぼくをおぼれさすことはできないってことだぜ」
「それって、すごくいいルールね」
アディは、感心して、うなずきましたが、モルテンは、
「いやあ、時には、とてもこまったルールだよ。はらがへっている時なんか、特にね」
と、笑いました。