今回公開する物語「ラブソング」は、私の製作した豆本『Love Letter』に収められています。テーマは“変わらぬ愛情”。
2022年ギャラリーウシンで行われた展覧会『豆本箱』で販売された豆本で、今回、皆様にWEB上でお届けできるのが嬉しいです。
ラブソング
Y字路の角に、森がある。本当はそこは森じゃなく、人の家で、長いこと手入れされなかった庭木が、森のように伸びきっているだけ。そこに住んでいるのは「カドノ博士」。この町の人なら、一度は名前を聞いたことがあるだろう。都市伝説を研究していて、100年も前から、そこにいるという噂の人物。博士自体が、もはや一つの都市伝説。
そのカドノ博士からきた手紙を、学校からもどったモカが見つけた。内容は、こうだ。
50年前にQ社から発売された
銀ラベルのカセットテープをお持ちの方、
至急、ご連絡を。
研究材料として探しております。
薄謝あり。
モカはママにたずねた。
「薄謝って、なーに?」
「ちょっとした御礼ってことよ」
カドノ博士がくれる御礼なら、 すごい物に決まっている。モカは家を飛び出して、おばあちゃんの家へ急いだ。あそこなら、50年前の物がいっぱいありそう。
(次のページに続く)