ラブソング

文と絵・田村理江

「こんにちは! おばあちゃん」
ドアは開いているのに、返事がない。奥の部屋から、おばあちゃんのガミガミ声が聞こえる。あーあ、また、おじいちゃんとケンカしてるな。

「こんにちはったら、こんにちは!」
「あーら、モカちゃん」
おばあちゃんの声がやさしく変わった。
「いらっしゃい。学校、すんだの?」
「うん。あのさ、このおうちにカセットテープって、ある?」

おじいちゃんも出てきた。
「あるさあるさ、ごまんとある」
横で、おばあちゃんが、
「なんでも溜め込んで、散らかし放題なんだから」
と、ブツブツ言った。

「見せて! 今すぐ」
押し入れを開けると、おじいちゃんの集めたカセットテープが山のように出てきた。
「こりゃ50年前のロックだぞ。今聴いてもカッコイイぞ。聴いてみるか?」
モカは首を横に振る。音楽なんか、どうでもいい。探しているのは銀ラベルのーーー。
「あった!」
山の底に、ついに見つけた。
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田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ