「こんにちは! おばあちゃん」
ドアは開いているのに、返事がない。奥の部屋から、おばあちゃんのガミガミ声が聞こえる。あーあ、また、おじいちゃんとケンカしてるな。
「こんにちはったら、こんにちは!」
「あーら、モカちゃん」
おばあちゃんの声がやさしく変わった。
「いらっしゃい。学校、すんだの?」
「うん。あのさ、このおうちにカセットテープって、ある?」
おじいちゃんも出てきた。
「あるさあるさ、ごまんとある」
横で、おばあちゃんが、
「なんでも溜め込んで、散らかし放題なんだから」
と、ブツブツ言った。
「見せて! 今すぐ」
押し入れを開けると、おじいちゃんの集めたカセットテープが山のように出てきた。
「こりゃ50年前のロックだぞ。今聴いてもカッコイイぞ。聴いてみるか?」
モカは首を横に振る。音楽なんか、どうでもいい。探しているのは銀ラベルのーーー。
「あった!」
山の底に、ついに見つけた。
(次のページに続く)