ラブソング

文と絵・田村理江

モカは、おばあちゃんの家へ飛び込んだ。
「ビッグニュースよ!」
おばあちゃんとおじいちゃんは、今日もケンカの真っ最中だった。
「何度言ってもテレビをつけっぱなしなんだから、いやんなっちゃう」
「おまえの料理は味が薄くて食えん」
トゲトゲした空気をかき分けるように、モカは叫ぶ。

「二人とも! 出かけるよ!」
「いったい、どこへ?」
「Y字路の森へ。さぁ、早く早く」

Y字路の森では、この間と同じようにトナカイが待っていて、道を開けてくれた。おばあちゃんとおじいちゃんは、目を丸くするばかり。転んだ家を見て、さらにびっくり。

「ようこそ、みなさん!」
一階の窓から、仙人めいた白髭のおじいさんがのぞいている。
キョトンとするモカに、仙人が親しげに笑いかけた。
「ぼくだよ、モカちゃん。時間戻しの実験、どうやら失敗だったみたい」
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田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ