私の書く手紙は、お客様が「欲しかった」、でも「決して手に入らない」手紙なんです。片思いの彼からの心のこもった手紙。亡くなったパートナーからの感謝の手紙。ケンカ別れして音信不通になった友からのこだわりのない手紙。いろいろ。
お客様には、相手の方の文字が記されたものを持ってきてもらい、私はその文字のクセを忠実に倣い、書いていきます。文面は、お客様のお望み通り。たいていは、熱烈なラブレターです。
偽りの手紙で商売するなんて、とお叱りを受けるのも、ごもっとも。でも、お客様は「偽」であっても、ひとときの安らぎが欲しいのです。手紙は、お客様の心のお守りになり、大袈裟かもしれませんが、明日を生きる力になるのです。
あなたが今、幸せでも、振り返れば一つくらい、実らなかった恋があるのではないでしょうか? 思い出してみてください、その人のことを。もし、その人があなたを想ってペンを執ったらーーー、ねぇ、久々に胸がときめきません?
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