帰ってからぼくは、きのう以上にてひどく叱られた。
でも、ぼくはきのうよりもさらにお説教に耳を傾けることができなかった。
叱られながら、どうしてもぼくは、ネクタイのことを考えずにはいられなかったから。
翌日、学校にいき、イスに座ろうとしたときだった。
ネクタイがぼくのところへやってきた。まだ手にかばんを持ったまま。ネクタイは教室に入るなり、自分の席にはいかず、直接、ぼくのとこにきたようだ。
なにごとかと警戒するぼくに、ネクタイはいった。
「ちょっといいかな、竹春。ふふん」
ネクタイと屋上にいく。二度目だ。朝日がまばゆく、屋上の地面に、フェンスの影が、面白いカタチとなって落ちている。
春のわた雲が青空のなかを流れていた。
「・・・そのぅ、なんだい、竹春、ふふん。・・・いや、きのうはどうも悪かったなぇ。ついカッとしちゃって。ぼくが悪かったよ。手紙はしっかり読んで、小竹さんにはちゃんと返事をしたよ。ふふん、これでいいかな? ぼくを許してくれるかい?」
「・・・・・・」
ああ、なんていうことだ。
「ふふん、きみになぐられて、わかったんだよ。・・・その、えーと、小竹さんがどんなに真剣に、ぼくに好意を寄せてくれているっていうことが。ふんふん・・・、それときみの気持ちも。だからちゃんとしなくちゃいけないと思ったんだ」
まったく、なんてことだろう。
ぼくはぼくの過ちがはっきりとわかった。
カミナリにでも打たれたように、ネクタイの一語一句がぼくの全身をつらぬいた。