「・・・許すもなにも、ぼくも悪い。・・・ううん、本当はみんなぼくが悪かったんだ。ごめん・・・」
ぼくはネクタイに頭を下げた。
「あ、そう? ふふふん、ほんとぅ? ほぅ、それは良かった、ふんふん」
ネクタイの顔には、ぼくが初めて見る表情が浮かんでいた。ほっとしたような、やわらかな笑顔。嬉し気な笑顔。
「・・・ふふふん、ぼくも謝らなくてはいけないね。それだけのことを竹春にも、小竹さんにもしてしまった」
そして紳士然とした風貌(ふうぼう)で、右手を胸におき、深くこうべをたれた。そのしぐさが、いかにもネクタイぽくって、ぼくは笑ってしまった。
そして思った。
こいつなんていいやつだろう!
ネクタイの上辺しか見てなかったのは、べにちゃんじゃない、ぼくのほうだったのだ。
べにちゃんは、ネクタイのいいところが、ちゃんとわかっていたんだ。ちゃんとネクタイを見て、好きになったのだ。