春を泳ぐヒカリたち(7/11)

文・高橋友明  

お釈迦(しゃか)さまとイエスキリストさまと閻魔(えんま)さまが、ぼくを取りかこんでいた。三者は、ぼくを中心とした正三角形の各頂点に立っている。どうあってもぼくを逃がさない、という強い意志が感じられた。

さらにそのまわりには、鬼や妖精や人間が群集(ぐんしゅう)となって取りかこみ、ワーワー、ギャーギャーと、ぼくになんだかわからない――しかし非難だとははっきりわかる――うめき声を上げていた。
遠くに針の山がそびえ、空は赤黒く広がっていて、どれもぼくを見下ろし、にらんでいた。

お釈迦さまがぼくの頬をひっぱたく。
イエスキリストさまがぼくのお尻をけっとばす。
閻魔さまがぼくの舌をひっこ抜く。
そして、三者はドスン! ドスン! ドスンと順繰りにいい放った。その声たるや、隣に雷でも落ちたみたいな大きさだ。

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。