「これでよし。次は、戴冠式(たいかんしき)じゃ」
正式な王さまがいないうちに、となりの国が攻めてきては大変です。
気が気ではない大臣たちは、結婚式が終わると、さっさとその場所を片づけて、戴冠式の会場にもよう替えしました。
大僧正も、結婚式用の衣装から戴冠式用へと、急いで衣替えです。
「大僧正殿、めんどうな儀式は、いっさい、はしょってくだされ」
「かしこまりました。では、ハンス殿、あれもこれも飛ばして・・・と。神の御名(みな)において、この王冠をお受けくださいませ」
大僧正は、たくさんの宝石のはまった金の冠を、ハンスのもじゃもじゃ頭に、ぎゅっと、かぶせました。
「ハンス王、ばんざい!」
人々は、いっせいに、叫びました。大臣たちは、ほっと、胸をなでおろしました。
「やれやれ。ともあれ、王さまは間に合った。次は、アウロラさまが正式な女王になる番じゃ。さあさ、大僧正殿」
大臣たちにうながされて、大僧正は、ハンスのかたわらにかしこまっているアウロラに、これまた豪華な、でも、とても重そうな女王の冠をかぶせようとしました。
その時です。
急に強い風が吹いてきて、冠を吹き飛ばしてしまいました。