ハンスは、アウロラが飛び去った窓を見上げました。
高い空に、ちぎれ雲が吹き飛んでいきます。
ハンスはさびしい気持ちでいっぱいになりました。
(だけんど、ひとりぼっちで旅しなくちゃならねえ王女さまは、おらより、もっと、さびしいに違いねえ・・・)
ハンスは決心しました。
「ああ、わかったよ。おら、王女さまの帰りを待って、留守をちゃんと守るだよ。だけんど、いったい、いつ、王女さまは帰ってくるだね」
すると、魔女は、どこからか、1本の苗木を取り出しました。
「これを庭にお植え。長旅をしているうちに、あの娘は帰る場所を忘れてしまうだろう。その時、これが目印になるからね」
苗木をハンスの前に置くと、魔女は風に姿を変えて、ひゅうっと、窓から出て行きました。
とたんに、人々をしばっていた魔法が解けました。ハンスは、あわてて、風を追いかけて、
「いったい、それはいつだね」
と、叫びました。
「その木に花が咲いた時に・・・」
と、かすかな答えが返ってきました。