国境で使者の帰りを待っていたとなりの国王は、いきなり現れたおんぼろ軍隊に、すっかり、うろたえてしまいました。
「待て待て。余は、まだ、使者の返事を待っているところじゃ。いきなりとは、無礼ではないか、ハンス王」
でも、ハンスは、兵隊たちをふり返って、叫びました。
「あいさつなんか、ぬきだ。のっけからやっちまえ!」
あっという間に、となりの国の兵隊たちは、ぼこぼこにされてしまいました。
国王もつかまえられ、ハンスの前に引き出されました。
「ここはおらの嫁さまの国だぞ。さっさと出て行かねえと、もっとひでえめにあわせるぞ」
となりの国王は、やっとのことで、言い返しました。
「最初に戦争をしかけたのは、おまえの国の方ではないか。余の国をあらし、財産をうばったため、余の国の人々は、いまだに難儀(なんぎ)しておるのじゃぞ」
ハンスは目を丸くしました。それから、となりの国王の手を取って立たせ、ていねいに頭を下げました。
「そうだったかね。そりゃ、すまねえことをしただ。前の王さまが取ったものは、ぜんぶ、お返ししますだよ。許してくだせえ」
今度はとなりの国王が目を丸くする番でした。
「あなたは正直なお方だ、ハンス殿。これからは、仲良く、平和におつきあいしていきましょう」
言葉の通り、ハンスは、戦争で奪ったものを、ぜんぶ、となりの国に返しました。そして、ハンスととなりの国王は、ほんとうに大の仲良しになりました。
ふたつの国の間には広い道が通り、人々が自由に行き交って、商売が盛んになりました。それで、両方の国が、ともに豊かになりました。
ハンスは、ほかの国々とも、同じように仲良くしましたから、戦争はなくなり、どの国の人々も、安心して、暮らせるようになりました。