猫アンテナ狂想曲(2/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

  2 依頼

「ふー、食った、食った」
と腹をさすりながら、男は、4袋目にかかったオレのぜんざいにうらやまし気な視線を当てる。
もう、まったく!
「欲しいんですか?」
と、鍋の中で泳ぐ最後のぜんざい、5袋目を目で示す。

「いいのか?」
「はあ」
「アキラ、おまえ、いい奴だな」
いえ、そんなんじゃ、ないです。
アナタの大人げない視線を浴びながら、5袋目を食べる勇気が、ないだけですから。
心の中でつぶやいた時、その電話は鳴った。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。