「猿神探偵事務所、・・・そうです、ワタシが所長の猿神です。名は十二支のトラとウサギと書いて寅卯。人呼んで名探偵猿神寅卯とはワタシのことです」
ふーん、この人、探偵なのか。
性格その他はさておいて、映画やテレビ、本の中にしか居ないと思っていた探偵が、ここにいる!と思うと、ちょっと感激だ。
ついつい、マジマジ見てしまう。
「そうですか。ふくふく亭に置いたチラシをご覧になった・・・。ええ、家具の移動、草むしり、ハチ退治の請け負いも可能です」
って、それって、探偵の仕事というより、便利屋っぽくないか?
「えっ! 猫捜しですか? それは他所を当たってください。ワタシ、猫は苦手でして」
猿神さんが置きかけた受話器を、
「待ってください!」
オレは慌てて奪い取る。