「よし、そうと決まれば、さっそく営業だ!」
「営業、って?」問いかけるオレに、
「まあ、見てろ」猿神さんは片目をつぶり、
「福来さん、先日、ここにチラシを置かせてもらったおかげさまで、商売繁盛助かりました。また、新しいの持って来ますんで、よろしく!」
厨房の奥に、大きな声で呼びかける。
「そうか、商売繁盛か」
「はい。家具の移動、雪かき、靴捜しなどの依頼が来ました。ありがとうございました」
「こちらも世話になってることだし、お互いさまだって」
厨房の隅に置かれたスツールに、こちらに背を向け腰かけていた福来さんが、立ち上がりやってくる。
左手に持っているのは、ハンバーガーだ。
ちゅ、中華の店主が、ハンバーガー!!!
「ああ、食事中でしたか。これからがかき入れ時、忙しくなるんでしょう?」
「まあな。そろそろツアーのお客様たちがいらっしゃる」
福来さんはホコリをかぶった壁時計に目をやると、残りのハンバーガーを口いっぱいにほおばった。