6 侵入者
「怪しい・・・」
門の前で猿神さんの足が止まる。
「どこが・・・」
オレが来た時、犬神家状態の時の方が、怪しさに満ち満ちていましたが・・・。
「ほら、見てみろ、この足跡」
そういえば、家を出る時、オレたちの足跡しかなかったな、と記憶をたどり、
「郵便配達、あるいは回覧板を持って来た人のもの、という可能性は?」
第1助手らしい発言を試みてから、猿神家の門と玄関まで、往復する怪しい足跡を観察しつつ、歩を進める。
「アキラ、おまえは・・・」
「はい」
「足跡をながめていると、足跡を残していった人物像を割り出せる、そんな能力は、」
「ありません!」
「残念だ」
「猿神さん、残念がってる暇があるのなら、怪しい足跡かそうでない足跡かの区別くらい、自分でつけられるようになってください。ほら、あそこに」
「なーんだ、回覧板か」
「もう、まったく!」
「睨むな。とにかく、家に入ろう」
「いえ、今日は、もう失礼します」
チャッピーの飼い主に連絡がとれないのなら、ここにいてもしょうがない。
「ぜんざいは?」
「テーブルの上のぜんざいは、全部食べつくしましたから」
さようならと踵を返すオレに、
「ワシを甘く見るなよ。ぜんざいは箱買いする主義なんだ。在庫はたっぷりある」
猿神さんは、玄関の鍵を開け、上がれと顎で促した。