『わたしのおふねマギーB』
アイリーン・ハース 作・絵
うちだ りさこ 訳
福音館書店 1976年7月15日刊
◆平和な世界を思い出させてくれる
皆さんは、子どもの頃に読んだ絵本の中で一番印象に残っている絵本、今でも大好きな絵本はありますか?
今回紹介する絵本は、私が幼少期の頃から今も大切に持ち続けている一冊です。
子どもの頃、私の母はたくさんの絵本を買い与えてくれました。また良質な絵本を見抜く審美眼も持ち合わせていたので、素晴らしい絵本に囲まれて育ちました。
その中でも特に絵の美しさとストーリーの温かさに惹かれたのがこの絵本です。
私は子どもの頃この絵本を枕元に置いて何度も飽きることなく読み返し、大人になって実家を出た後もこの絵本をずっと手放さずに持ち続けています。
これまでたくさんの絵本を読み、その数は1000冊以上にもなりますが、私の中で後にも先にもこの絵本を超える作品はないと思えるくらい大好きです。
作者のアイリーン・ハースはアメリカのニューヨーク育ち、劇場の舞台、陶器、壁紙、生地、レコードのジャケットなどを手掛けるデザイナー、イラストレーターでした。
この絵本はその彼女が絵だけでなく文も書いた初めての絵本になります。
主人公のマーガレットは、ある晩、おふねがほしいとお星さまに願いをかけ眠りにつきます。
そして目が覚めてみるとそこはなんと船の中。かわいい弟のジェームスも一緒でした。
そこからふたりの船の生活が始まります。
この絵本の最大の魅力はなんといっても水彩で描かれた絵の美しさです。
また、物語は穏やかな場面と緊迫感のある場面によって見事に緩急がつけられていて、自然と読者を物語の世界に引き込む工夫がなされています。
子どもの柔和な表情、食欲をそそるようなお料理の数々、何気ない日常の暮らし・・・。そこになんといえない平和を感じさせてくれます。
大人になってから、「これは私の理想とする生活だ」と気づき、この絵本に惹かれていた理由がわかりました。
そんな素晴らしい絵本の世界にぜひ触れてみてほしいです。
そして、あなたが子どもの頃大好きだった絵本を大切にしてほしいと願います。
それはあなたの人生観に繋がっていたり、内なる理想の世界を教えてくれるきっかけになるかもしれません。