風とウメボシ(1/2)

「フウ、ネットでウメボシの作り方を見つけたわ」
よういするものはウメ、シオ、赤ジソ、おひさま、夜の風。
「しんじられない。それだけでウメボシができるの?」
「おひさまと夜の風? わからないけど、やってみようか」
ぼくとお母さんは、ひとばんウメを水につけた。

つぎの日に、ひとつひとつフキンでふいた。
はなのおくが、すうっとした。
キャンデーみたいだ。
でもナマで食べちゃいけない。
「入れものに、ウメとシオを入れたら、石をのっけて・・・」
しばらくすると、ウメから水が出てくるらしい。

「シオが多すぎる。しょっぱいウメボシなんか食えるか」
じいちゃんが、のぞきこんで、どなった。
「うるさいなあ」
ほんとうはドキっとした。
いっしゅんだけ手がすべって、シオがドバッと入ってしまったんだ。
食べられなくなったら、どうしよう。
なんだかもう、キッチンに入りたくない。

結城紀子 について

(ゆうきのりこ) 岩手県三陸沿岸出身。中学生時代、注意散漫な生徒だったため、担任より授業中の様子をマンガで描いて毎日提出するよう命じられる。学生時代は、東洋大学アイスホッケー新聞を発行。その後、地域の子育てマップ等にて、4コママンガやイラストを発表。2005年より童話創作を始め今に至る。季節風同人、河童の会同人、日本児童文芸家協会会員。カウンセラーと福祉主事の草鞋も履いている。