2 1つ目の願い
あるいは・・・。
「あれは魔女ではなく、ただのじょうだん好きのばあさんで、おれはかつがれただけかもしれない」
でも、あらためて指輪を見ると、根でもはえたようにぴったりと指にすいつき、あやしいかがやきを放っています。とてもただの指輪には思えません。
「この場で、指ごと、切り落としてしまおうか・・・?」
セムは、ふところから、おずおずと、ナイフを取り出しました。
でも、なかなか、決心がつかず、さんざん迷ったあげくに、セムは、とうとう、ナイフを引っこめてしまいました。
「ばかばかしい。痛い思いをして、一生、9本指で過ごすなんて。それより、もっと、簡単な方法があるぞ。何のことはない、死ぬまで、願い事をしなければいいんだ。ようし、おれは、こんりんざい、何も願わないぞ」
そうと決まれば、何も悩むことはありません。セムは、元気よく、歩き出しました。