3つの願い(2/5)

文・伊藤由美  

すると、急に、まわりが、ぱあっと、明るくなりました。
そこは、美しい畑の中でした。
青い麦のほが、つんつんと、のびて、ヒバリの楽し気な歌がふってきます。
コロコロと、すんだ音を立てて、川が流れています。

セムは、つくづく、感心しました。
「いいところだなあ。どこへ行っても、戦争に荒らされて、さんざんだというのに。たぶん、ここを治める領主がとてもかしこくて、長い戦争の間も、自分の領地を、けんめいに守ったんだろうな」
やがて、広い畑地がと切れるあたりで、並木に、ちらちら、見えかくれして、村が見えて来ました。

セムは、川にかかる石橋をわたって、村の中に入って行きました。
しばらく行くと、にぎやかな笑い声が聞こえてきました。見ると、井戸のまわりでおかみさんたちが、水くみをしたり、洗たくしたりしながら、おしゃべりをしています。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに