冷たい井戸水を心行くまで飲んで、一息つくと、セムは、おかみさんたちの質問に、ひとつひとつ、ていねいに答えていきました。
遠い国で生まれたこと。
親きょうだいには早くに死に別れて、ひとりぼっちなこと。
もう兵隊はこりごりで、これから町に行って、ためたお金で小商いでも始めようと思うこと、などなど。
「だが、本当言うと、そうぞうしい町で暮らすのも、今一つ、気が進まないんですよ。こんな豊かな村で、土を耕しながら、平和に暮らせたら、どんなにいいだろう」
「村で暮らしたいだって!」
おかみさんたちは、カラカラ、笑いました。
「こんな何もない田舎で暮らすより、町の方が、どんなにか面白かろうに! 女たちだって、あたしらとは、比べ物にならないくらい、べっぴんだろうしさ!」
それでも、おかみさんたちは、まんざらでもないらしく、セムに、ずっと親しみのこもったまなざしを向けました。