「ソラちゃんは、何年生なのかな?」
と美容師さん。
「ボク・・・4年生・・・です」
とソラ。
「お!ボクっ子か! お兄ちゃんと仲良しなんだね」
ソラはいくらかうれしくなりました。ふっくらとホホのふくらんだ丸顔に、人なっこい笑顔をうかべました。
小さいころからソラはお兄ちゃんのくっつき虫。お外でお兄ちゃんとたこあげやキャッチボールをするのが大好きでした。ところが、いつからかお兄ちゃんは、
「ボク、行かない」
が口ぐせになりました。そして、ある日、こう言ったのです。
「これからボクはオレになる。ボクはソラにあげる」
このときから、ソラはずっと自分のことをボクとよんでいます。「ボク」と言った時にくちびるからパチパチと小さなつぶがはじける感じがたまらなく楽しいのです。学校では女の子のくせにボクなんておかしい、と笑う人がいました。でも、お兄ちゃんはソラが「ボク」と言うとうれしそうでした。
「あらまあ」
ママとパパも笑っていました。
だから「ボクでいい」。いいえ、「ボクがいい」とソラが決めたのです。