それからしばらくの間、ギーコギーコとブランコをこぐ音だけが公園にひびきました。
ソラはさすがにこのままでは「ヤバイ」と思いました。そこで勇気を出して、女の子に話しかけてみました。
「ワッチャーネーム?」
「ワッチャーネーム????」
「ワッチャーネーム?」
「ワッチャーネーム??????」
あれれ、なぜか通じません。「ワッチャーネーム」は、日本にいるときに習った英語です。パパが買ってきた英語のビデオで「あなたの名前は何ですか?」は英語で、「ワッチャーム」と言っていたのです。
「ワッチャ」
とソラ。
「ワッチャ?」
と女の子。
「ワッチャネーム?」
とソラが言うと、
「ワッ、チャ、ネーム????」
女の子はゆっくりとくりかえしました。ソラは大きく何度もうなづきましたが、女の子はこまった顔。そこでソラは胸に手を当てて、
「ソラ」
と言いました。もう一度胸をトントンと叩いて、
「ソラ!」
と言い、その手を女の子にむけました。そのとたん、女の子のひとみが太陽のようにキラキラ光りました。
「オオ! ソラ!! アイム・ミリンダ!」
「ミ・リ・ン・ダ??」
ソラは聞き返しました。
「イエス、ミリンダ。マイ・ネーム・イズ・ミリンダ。ユア・ネーム・イズ・ソラ」
ソラのひとみもキラキラかがやきました。やっと通じたのです。「ワッチャーネーム」ではなく「ワット・ユア・ネーム」。「ネーム」が名前だとわかりました。